実践事例

【実践報告】ChatGPT音声対話を教科書の指導に組み込む授業デザイン

南部 久貴

2025年11月12日、勤務校である滋賀県立彦根東高等学校において、AIを活用した英語教育の公開授業を行いました。同校は文部科学省「AIの活用による英語教育強化事業」のモデル校に指定されており、私はAI英語活用リーダーを務めています。(プロフィールはこちら

以前の記事で、生成AIを対話の相手とした「タスク×生成AI」の実践(電話での問い合わせタスクなど)を紹介しましたが、今回はその発展形です。

今回はAIの活用を「単元の導入やまとめ」といった、普段の授業の流れの中で自然に使える活動としてデザインしました。

生成AIを単なる「検索ツール」や「翻訳機」としてではなく、生徒が英語でコミュニケーションを行うための「対話の相手」として位置づけ、生成AI「ChatGPT」の音声対話モードを活用した授業実践を共有します。

ChatGPTの無料版でも使用できるので、誰でも同じような実践を行うことができます。

今回の授業と生成AIを活用した新しい学習方法の提案

今回の授業の単元は、CROWN English Communication I(三省堂) Lesson 8 “Not So Long Ago” です。この単元のまとめとして本授業を行いました。

本授業のゴールは、「社会的な話題(20世紀の出来事)について、AIとの対話から得た情報をもとに、自分の言葉で他者に伝えることができる」ことです。

この単元では、20世紀の「戦争」に焦点が当てられていますが、20世紀のポジティブな面(「科学技術」や「人権」など)についても知り、多角的な視点から20世紀を捉えてほしいと考え、教科書外の写真を使用して授業を展開しました。

この教科書外の情報を得るために、ChatGPTの音声対話機能を活用しました。

今回の授業の、もう一つの狙いとしては、教科の専門家として、「AIと対話しながら英語を学ぶ」という新たな学習方法を生徒に提案することも意図していました。関心を持った生徒が自律的に学習を進められるよう、効果的なAI活用法を授業を通じて体験させたいと考えました。

授業の流れ

授業の流れは、AIと対話した後、人間同士の言語活動へと展開しました。

① ChatGPT(音声対話)との「探究活動」

本時のメインは、「Be a Detective」と題した活動です。 生徒には、教科書には載っていない20世紀を象徴する6種類の写真(ライト兄弟の初飛行、国連の設立、フォードの組立ラインなど)をランダムに配りました。その写真が何であるかの説明書きはありません。

生徒への指示として以下のルールを伝えました。

Instruction: “You may use ChatGPT but do not type. Please gather information about the photograph from AI.”
(ChatGPTを使ってもよいですが、タイプ入力してはいけません。AIからその写真の情報を集めてください。)

生徒たちは、ChatGPTの「Advanced Voice Mode(高度な音声対話モード)」を使用して、以下のような発話を行い、写真が何を示しているのかを特定し、情報を得ていきます。

生徒の発話例
  • I would like to get some information about a picture I have.
  • I heard this picture shows an important moment of the 20th century.
  • I can see…

文字入力ではなく「音声」のみでAIとやり取りすることで、リアルな英会話の瞬発力と、AIから情報を引き出す「問う力」が試されます。

生徒たちは写真の特徴を英語で描写したり、AIの説明を聞き返したりしながら、手元のワークシートに情報をまとめていきました。

今回、音声対話に取り組む前には、まずは私自身が実演を行いました。 生徒の中にはまだAIの音声操作に慣れていない生徒もいるため、実際の画面を見せながら操作方法を共有しました。さらに重要な点として、「AIとの対話の難易度は自分で調整できる」ことを伝えるため、あえて以下のフレーズを意識的に使って見せました。

AIとの対話の難易度を調整するフレーズ
  • “Please speak more slowly.”
  • “Will you say that again?”
  • “Please speak more simply.”

これらの「対話調整フレーズ」を導入することで、英語が聞き取れなかったり、難しすぎたりした際も諦めずにコミュニケーションを維持するストラテジーを提示しました。

② ジグソー法による「人間同士での情報共有」

AIとの対話で情報を得た後は、異なる写真を持っていた生徒同士でグループを組み直す「ジグソー法」による発表活動を行いました。 ここでは、AIから得た知識を、今度は「人間のパートナー」に英語で説明します。

「クラスメイトへの説明」というタスクは、①のAIとの対話時にも伝えてあり、AIとの対話の質を大きく変えたように感じています。生徒は、AIが提示した表現を聞き流すのではなく、「後で自分が使わなければならない表現」として捉え、自分の言葉として定着させようとする意識を持って対話に臨んでいました。

「AIと話して終わり」ではなく、「AIとの対話で得た情報を、他者とのコミュニケーションに活かす」という構成にすることで、AIに頼りすぎず、自分で考えてインプット、アウトプットを行うことができたと考えています。

音声対話モードで教科書とリンクした活動を展開するメリット

今回の実践を通じて、ChatGPTの音声対話モードは、単なるフリートークの練習相手にとどまらず、「教科書の内容を深めるための強力なツール」として、単元のあらゆる場面(導入・展開・まとめ)に応用できると考えています。

導入:視覚情報から対話を始める

例えば、教科書の単元のはじめに掲載されている写真や関連する画像を提示し、「何が見える?」「これはどういう状況だと思う?」とAIと話す活動は、単元の導入として非常に有効です。生徒は視覚情報を頼りに発話することができ、教科書のトピックへの興味・関心を自然に高めることができます。

もちろん生徒同士や対教師と同様の活動を行うことも可能ですが、AIは私たちよりはるかに多くの情報を持っています。そのため、視野を広げたり、より生徒に身近な話題に繋げたりすることはAIの方が得意でしょう。

展開:テーマを深掘りする情報収集

教科書の記述だけでは分からない背景知識や関連情報を、AIとの対話を通じて収集することもできます。教師が全ての情報を用意しなくても、AIが生徒の興味に応じた個別最適なリソースとなります。

まとめ:学びを自分の言葉で語る

単元のまとめとして、教科書で学んだ内容をAIに要約して話したり、トピックについての自分の意見をAIと議論したりする活動も効果的です。AIは文法的な誤りを指摘するだけでなく、内容に対するフィードバックも返してくれるため、生徒は「通じた」「対話ができた」という達成感を得ながら、学習内容の定着を図ることができます。

このように、音声対話モードを活用することで、教科書を生かしながら、一人ひとりがAIと対話し、多様なアウトプットを生み出す授業を展開できる点が最大のメリットです。

執筆:
南部 久貴(立命館大学グローバル・イノベーション研究機構 補助研究員)
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※本サイトは、立命館大学 R-GIROプロジェクト「記号創発システム科学創成:実世界人工知能と 次世代共生社会の学術融合研究拠点」の取り組みの一つです。

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